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衝撃的事実の連続にともすればうっかり忘れがちだが、昨夜の一件においての大恩人はもう一人いる。
柴田君…
彼は私の盾となり、悪漢に刺され病院へ連れて行かれた。
「誰って、酷い言い草ね…彼のおかげで私は助かったのに。」
その後どうなったか確認する間もなかったと言えばそれまでだが、きっと昨夜の彼は傷が疼いて眠れなかっただろうに、私も大概恩知らずな女だと思う。
「あれ?最終的には俺のおかげじゃなかったっけ?」
素っ気なく返された返事。
「何よそれ…冷たいわね。」
「べっつにー?」
ツンと澄まし顔をして拗ねるあたり、まるで小学生を相手にしているよう。
それにしても、どうしてだか最近特に反りが合わない部長と柴田君。
直属ではないにしても、同じ課に属する部下には変わりないのだし、勇敢に戦った柴田君を少し位は労わる気持ちが湧いて来ないものなのか。
と、罵る権利は私にも無いのだけれど。
「…柴田君が嫌いなの?」
「おっと…随分ストレートに聞くね。」
「…だっておかしいわよ。男女問わず八方美人のあなたが、柴田君にだけやたら厳しいなんて。」
普通なら愛する人を守ってくれた相手に、感謝するものじゃない?
疑問を投げ掛けると、部長はハッと鼻で笑う。
「なら聞くけど…俺の事は直ぐ疑っておいてさ、もう一人都合良く現れた彼に関しては、何で何の疑問も持たない訳?」
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