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電話は柴田君から三件。
留守番電話も入っているようだ。
私を震撼させたメールは……約束を反故にした戸塚さんだった。
慌てて開こうとして、
「……何?どうしたの?」
邪魔者の視線を感じ、反射的にサッとバッグに仕舞う。
「な、何でもないわよ。充電切れだっただけ。」
咄嗟に付いた苦しい嘘が見抜かれないように、極力平然を装った。
「あなた、部下の連絡先位、当然登録してるわよね?」
「…そりゃあまぁ、一応は。」
訝し気な、怪しむ顔。
ヒュッ…と喉が、小さく異音を鳴らす。
…ここは何としても誤魔化さなきゃ…
別に部長との関係がどうなろうと構わない。
だけど、戸川さんの存在を知られるのは…『二人』の立場上、困るだけでは済まされないのだ。
「じゃあ、あなたから柴田君に連絡して頂戴。」
わざと高飛車に振る舞えば、部長は余計にジロッと睨む。
「…それって頼んでるつもり?」
「いいえ、上司としての自覚を問うているだけよ。」
「…ああ言えばこう言う…」
まだどこか不満気そうだったけど、
「…ハイハイ、わかりましたよ。かければいいんだろ、かければ。」
一旦部屋を出て直ぐにスマホを探して来たらしく、親指でタッチとスクロールを器用に操作しながら戻り、
「…ほら。」
柴田君の番号が出た画面を見せ、発信を押した。
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