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仏頂面で渡されたスマホを受け取り、耳に寄せ呼び出し音を聞く。
五回、十回と鳴らしても柴田君は出なかった。
十数回目でついに留守番電話となり…もしや、入院しているのではと思い不安に襲われながら、一先ず伝言を残す。
「…もしもし、あの…相川ですけど…昨日はごめ」
「もしもし主任!?」
「っ!…柴田君!?」
電話が突然切り替わり、持ち主の素っ頓狂な声に驚いて私も声が裏返ってしまった。
「あなた今っ」
「…これ主任の電話じゃないっスよね?」
「え?」
どんな様子なのか尋ねようとした私の言葉を遮ったのは、明らかにトーンダウンした不機嫌な声。
「ええ…部長のをお借りしてるわよ?名前の表示が出てたでしょう?」
一応、部長のスマホにも登録されているのだからと、疑う事無く聞き返せば、
「…知りませんよ、使わない番号は登録してないんで。」
部下の意外な一面を知る。
「どうして?…だって、仕事でかける事もあるでしょう?」
何かしらトラブル等があった時は、真っ先に上司へ指示を仰ぐものだ。
それに彼らは何度か一緒に、行動を共にした筈。
なのに、
「…俺の直属の上司は主任っスよ。要件があれば主任にかけてましたし、今迄不都合は一切無かったっスよね?…なら今後も必要ないと思うんスけど。」
頑なな意思ばかりが、ヒシヒシと伝わって来る。
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