不純と矛盾

30/40
前へ
/326ページ
次へ
仏頂面で渡されたスマホを受け取り、耳に寄せ呼び出し音を聞く。 五回、十回と鳴らしても柴田君は出なかった。 十数回目でついに留守番電話となり…もしや、入院しているのではと思い不安に襲われながら、一先ず伝言を残す。 「…もしもし、あの…相川ですけど…昨日はごめ」 「もしもし主任!?」 「っ!…柴田君!?」 電話が突然切り替わり、持ち主の素っ頓狂な声に驚いて私も声が裏返ってしまった。 「あなた今っ」 「…これ主任の電話じゃないっスよね?」 「え?」 どんな様子なのか尋ねようとした私の言葉を遮ったのは、明らかにトーンダウンした不機嫌な声。 「ええ…部長のをお借りしてるわよ?名前の表示が出てたでしょう?」 一応、部長のスマホにも登録されているのだからと、疑う事無く聞き返せば、 「…知りませんよ、使わない番号は登録してないんで。」 部下の意外な一面を知る。 「どうして?…だって、仕事でかける事もあるでしょう?」 何かしらトラブル等があった時は、真っ先に上司へ指示を仰ぐものだ。 それに彼らは何度か一緒に、行動を共にした筈。 なのに、 「…俺の直属の上司は主任っスよ。要件があれば主任にかけてましたし、今迄不都合は一切無かったっスよね?…なら今後も必要ないと思うんスけど。」 頑なな意思ばかりが、ヒシヒシと伝わって来る。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9827人が本棚に入れています
本棚に追加