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醸し出す雰囲気というか空気というか…何を想像してるのか何と無くわかってしまい、ちょっとだけ反応に困る。
どう答えればいいのやら…
その空気を打ち消すように軽く咳払いをして、
「えっと…それより怪我の具合はどう?」
様子を伺うように尋ねると、
「…大した事なかったス。」
どうやら話題を変えたのが、気に食わなかったらしい声色が返って来た。
「嘘言わないで、あんなに血が出てたのに…」
流れ出る鮮血を、思い出しただけでも身震いがする。
「派手なのは見た目だけっスよ。」
「…何針縫ったの?」
「病院の治療もチョチョイのチョイで」
「何針?」
「すぐに帰って来」
「怒るわよ?」
「……五針っス。」
「そう。…最初から正直に仰い、痩せ我慢して嘘をつかれる方が…辛いわ。」
「…スンマセン、した。」
元々は私の不注意が原因で、柴田君は巻き込まれただけ。
「ううん、私の方こそごめんなさい。先にお礼を言わなきゃいけなかったのに…有難う、助けてくれて。あなたがいなかったら私は今頃…」
きっと、あのチンピラ達に弄ばれていただろう。
電話越しの相手に、自然と頭を下げた。
だけどまた沈黙が訪れて。
「…柴田君?聞こえてる?」
「……はぁー……」
次には盛大な溜息が聞こえて来た。
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