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柴田君一人がとばっちりの災難ばかりで、どうにも後味が悪いから、
「じゃあせめて、治療費を出させてくれない?後、お見舞いも行きたいんだけど…今どこにいるの?」
自己満足と言われても、最低限の償いはするつもりでいた。
「そんなの気にしなくていいんスよ。部長も言ってたじゃないスか、労災なり何なり使えるものは使えって。」
それに関しては苦笑いでノーコメント。
職権乱用には賛同し兼ねるのだけれど、きっと経理部にしてもどこの部署だろうと、絶対的権力に逆らいはしないだろうし『長い物には巻かれろ』という悪循環な風習を、今回に限り責める気にはなれなかった。
「どうせ権力振りかざしてやりたい放題なんスから、こっちも利用させて貰いますよ。けど…」
「けど?何?」
酷い言われようの本人を尻目に、次の言葉を待つ。
暫しの沈黙の後…
「えー…っと…見舞いは来て欲しいんスけど…勿論、主任一人で。俺ンちの詳しい住所、今からメールで教えますから。…ダメスかね?」
ちょっと照れ臭そうな感じの声が聞こえた。
本人が部長に会いたくないと言うのなら、無理に連れてく必要もないか…
「全然いいわよ。何か欲しい物があったら言って?」
「欲しい物、スか?そうっスね…」
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