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「それはどういう」
「柴田君。」
「え、」
「ずっと黙ってたら、柴田君が変に思うんじゃない?」
はぐらかしてそっぽを向くその態度が、何とも憎たらしい。
「あなたが先に横槍入れたんでしょ!」
「ハイハイ、すみませんでした。続きをどうぞ?」
…何て勝手な言い草…
数時間前に、甘い台詞を囁いていた同じ人とはとても思えない。
気分屋にしては相当タチが悪過ぎる。
だけど…一瞬、ドキリとした。
本当は私と戸塚さんの関係に、気付いてるんじゃないかって。
『もしもーし!主任!?もしもーしっ!』
「あ、ごめんなさいね。」
何度もくぐもった声で呼ばれ、慌ててスマホを耳元へ戻した。
「何かあったんスか!?まさか部長が無理矢理」
「違うから。…プライベートに干渉するなって、注意されていただけよ。」
『無理矢理』の後は何と無く想像出来るけれど、もうとっくに後の祭りだし要らぬお世話だ。
すると柴田君は、
「そ、スか…なら良かっ、じゃなくて…!」
急にトーンを下げ溜息をついたかと思うと、
「……俺、彼女とかいないスからね。て言うか寧ろ、幾らでも干渉して下さいよ。主任に知られて困るような後ろめたい事は〝俺の場合〟何もないですし。」
私以外の誰かに対して、毒を吐いてみせる。
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