不純と矛盾

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部長の場合、後ろめたいどころか犯罪やり放題だものね… こんな悪党と比べる事自体、間違いだと教えてあげたい。 「そう…なら急で申し訳ないんだけれど、今からお見舞いに行ってもいいかしら?」 「主任〝だけ〟なら喜んで。」 「…ご希望に沿うよう努めるわ。」 「それと…さっき言ってた『欲しいもの』っスけど…」 「何かある?」 「…主任。」 「…え?」 「主任、の手料理が食ってみたいっス。俺、まだ朝飯も食ってなくて…ダメすかね?」 探るような甘えた声。 何だか急に『待て』をしている大型犬のイメージが浮かんだ。 「ダメじゃないけど…どうして食べてないの?」 「…起き抜けなんスよ。」 「やだ、もしかしなくても休んでるとこ起こしちゃった?」 「だから電話も出なかったんスけどね。」 「…うん、私も悪かった事だし…そういう事にしておきましょうか。」 きっと私が留守電にメッセージを入れなければ、部長からかかった電話は無視してそのまま寝ていたんだろうと思ったら、申し訳ない気さえして来る。 「それで?…リクエストは何?」 「マジで来てくれんスか?」 「行くわよ、味の保証は出来ないけど。ついでに私も一緒に頂くわ。」 「大丈夫スよ、毒味は先に俺がしますから。」 「ひど…っ!一応謙遜してみせたに決まってるでしょ!これでも時々は自炊してるんだからね!?怪我人にトドメを刺す殺人的な料理なんて、わざわざ作る訳ないじゃない!!」
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