不純と矛盾

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…とうとうキレたわね… 私にだけ醜い感情を、恥ずかしげもなく露わにするこの男の、何と扱いにくい事か。 猶予は一年間。 その間互いの行動は自由で縛らないのが私達の…いえ、私が自分の都合の良いように定めたルールだった。 それは少しでも優位に立って、円滑にラストを迎える為に他ならないが、どうあってもあがらえないのはキレた人間の奮う金の力と…社会的な絶対権力だ。 部長に媚を売るなんてとんでもない話しだけど、また柴田君に火の粉をかかったら何もかもが意味を成さないのだし。 …仕方が無い… 諦め混じりの小さな溜息を零してから、普段より多めに息を吸い込んだ。 「要件が済んだら連絡するわ。だから余計な詮索はしないで、大人しく待ってなさい。」 怒鳴る訳でも叫ぶ訳でもなく、振り返って室内に話しかける。 暫く待ってみたけれど、シンと静まり返った部屋からは一言も返事が無くて。 本気で拗ねた男って奴は多分、癇癪を起こした子供と同じに手も付けられず、気苦労が絶えないように思う。 戸塚さんの件もあるのに、これ以上煩わせないで欲しいものだわ… 「はあぁ…」 今度は聞こえよがしの大きな溜息を落とし、そのまま部屋を後にした。
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