告白と繋縛

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煌びやかなマンションを出て少し歩き、大通り付近の最寄り駅を目指す。 けれど別段急いではいない。 新鮮な空気を大きく吸い込み、徐に携帯を出し電源を入れる。 画面にライトが灯るなり、一番にメールを開いた。 緊張しながらそっと見た戸塚さんからの送信メールには、 『この貸しは高くつくよ?』 と、たったの一行しか書かれていなくて。 だけどその短い文が、途轍もなく重い。 自然と眉間に皺を寄せ、歩道の隅に寄って足を止める。 望んで約束を反故にした訳じゃないけれど、どんなに理由を並び立てようとも最も重要視すべきこちらの『契約』をうっかり忘れていたのは私のミスなのだから、代償を払わなくてはいけない。 憂鬱な気分で返事を打つ。 『お手柔らかにお願いします』 とだけ。 送信して溜息をつく。 すると直ぐに手の中で強い振動が起こり、慌ててもう一度開く。 送信者は戸塚さんで折り返された内容は、 『また連絡する』 と…これもシンプルなもの。 『了解しました』 そう返し、今度こそ携帯をしまう。 ゆっくり足を進めながら、奇妙な感覚が生まれていた。 それは多分…歪な繋がりしかない私達が共に夜を過ごさず、休日の翌朝に連絡を取り合ったのが初めての出来事で、どうにも違和感が有り過ぎるからだ。
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