告白と繋縛

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先程携帯で見えた時間は、もう少ししたら午前九時になろうという所。 休日の朝から遠慮なくメールを送れたのは、彼が独り身だと知っているからだ。 だけど結局の所、もし戸塚さんが既婚者で奥さんや子供がいたとしても、あの頃の私は差し出された手に縋り付くしかなかっただろう。 背徳心や罪悪感なんか感じられない程、全てにおいて麻痺していたから。 こうなってしまった今となって思うのは、リスクが大きいのは戸塚さんの方だという事。 私達の関係が世間や会社に知れた時…立場的に最も厳しい制裁を受けるのは私より彼自身。 なのに何故、私を助けてくれたのか。 幾度か尋ねた事はあるけれど、はぐらかされてばかりだったから…答えを得ていないまま今日に至る。 それより…今度会う時は、どんな無茶を要求されるのかと気が気じゃないのも確か。 こんなケースは初めてだから次の呼び出しまで、少々ナーバスな日々を送る羽目になりそうな予感がした。 だからだろうか。 今になって気付いた事がある。 付いて来ると食い下がる部長を、柴田君のプライベートを主張し撃退したはいいものの… 「…そうよね…盗聴器付けたまま行くのは、やっぱりマズいわよね…」 もう二度と使わない、なんて口約束を全面的に信用する訳にはいかず。
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