告白と繋縛

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…うん、ちょっと…だいぶ年期が入ってるわね… 例えるならば、地方ならではの市営住宅にそっくりなアパート…と言ったところか。 元は白色のコンクリート造りであっただろうに、全体的に薄い茶系が滲み細かなヒビ割れが見え、生命力溢れる蔦が力強く有象無象に二階付近まで這い上がっている。 良く言えば自然と一体化した長閑な環境。 悪く言えば…大家と住人達の管理不足なのだけれど。 まぁそれも、ワイルドな風貌にマッチングしていて、逆に彼らしいと思った。 最近、贅沢の極みばかりをこれでもかという程見せつけられていたせいか、素朴で庶民的な暮らしが懐かしく感じられた。 私が経済難に陥っていた頃に借りていた、昭和初期そのままの姿を受け継ぐ六畳一間のボロアパートに比べれば、小さくともベランダ付きとか随分贅沢な住まいではあるが。 確か…一階の左端から二番目の107号室、だったかしら? 部屋の窓辺には薄い白のレースカーテンが、網戸越しに見えていた。 ジッと眺めていると、 『ーーーーシャッ!』 「あ、やっぱり主任!もしかしてと思ったらっ!」 カーテンと窓が素早く開いて、驚いた顔の柴田君が上半身をニョキッと外へ出す。 …び、びっくりした…
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