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眉間に皺を寄せギロリと一睨み。
「怒るわよ。」
「ハイ、さーせん。主任は冗談通じないんでしたね。」
「ヒトの事、ガッチガチの堅物みたいに言わないでくれる?…台所、借りるわよ。麺つゆはあるかしら?」
「あちゃー、主任は麺つゆ派っスかぁ、今切らしてんスよね。」
「柴田君は何派なの?」
「俺は塩コショウ派っス。きざみネギが入ってれば最強っスね。」
「小葱に関しては同感よ。…薬味に小葱と生姜は欠かせなくない?」
「素麺に冷奴スか?」
「焼きナスや豚汁にも合うわよ。」
「豚汁にスか?」
「身体も温まるし、風味豊かになるの。騙されたと思って一度試してごらんなさい。」
「…今度、主任が作って下さいよ…」
「ん?何?」
「…何でもないス。」
「?」
主婦的会話を弾ませながら自然に二人で台所へ移動し、柴田君が手慣れた様子でフライパンと調味料を取り出す。
「ガス元、捻りますね。」
「ええ、お願い。」
「火、付けます?」
「弱火でね。」
「オッケーっス。油、ひきましょうか?」
「あっ、やっぱりまだダメ、早いから入れないで。」
ボウルに割った玉子を二個落としただけで、塩コショウと小葱を混ぜていない。
「二個だけっスか?」
「足りない?もっと入れる?」
「どうせなら、いっぱい食べたいっス。」
柴田君はそう言って残りの玉子を全部、片手で器用に割ってみせた。
「そんなに?欲張りね。」
「愛情に飢えてるモンで。」
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