告白と繋縛

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利き手ではない左手だけで玉子を割って見せたものの、指先に白身の滑(ヌメ)りが付着したらしく、水でサッと洗い流している。 「えーと、塩コショウ…と…小葱は刻んで冷凍してるヤツっスけど、いいスか?」 端にぶら下がってるフェイスタオルで撫でるように拭き、冷蔵庫から次々と取り出す。 「これ、自分で?」 「そっスよ。近くのスーパーで10%引きン時買って、直ぐに刻んで冷凍保存したヤツっス。」 「…まるで主婦ね。」 「独り暮らしも長いっスから。」 ヘラッと砕けて笑う柴田君につられて、小さく笑って返した。 座って待つように言ってもお皿を出して準備をしたり、背後から覗いて来たりとどうにもやりづらかったけど… 一連の作業をこなしながら、ふと考えていた。 今迄例外なく他人との深い関わりを避けて来た私は、柴田君に限らず直属の部下達の事ですら何も知らないな、と。 それはなるべく面倒ごとに巻き込まれない為と、自分の素生を明かせない後ろめたさもあるからだ。 「うほっ、美味そう!」 二人で食べるには大量の卵焼きとレンジで温め直したそれぞれの弁当を前に、向かい合わせに座る。 「クスッ、何よ『うほっ』って。ゴリラじゃあるまいし。」 「プッ、主任…ゴリラネタ好きっスね。」 「ゴリラが好きなのは、あなたの方でしょ。」 そう言えば以前にそんな会話をして、笑われたような… 「マジ、美味そう。いただきまっす!」 「はい、召し上がれ。」
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