告白と繋縛

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豪快に卵焼きを頬張る姿。 「うっっめえぇーーー!」 「そう?良かった。遅い朝食になってごめんなさいね。」 「いえいえ、待った甲斐ありますって。マジウマッス!」 まるで、身体だけ大きくなった子供のよう。 「こんなに作らせたんだから、責任取って全部食べてね。」 「勿論っス。せっかく主任が俺の為に作ってくれた手料理を、残すハズないじゃないスか。いやぁ~家庭料理なんて久々っスよ。」 「卵焼きくらいで大袈裟じゃない?自分でも色々と作るんでしょうに。」 「作りますけど…何かこう、違うんスよ。自炊すんのと愛情込めて作って貰うのとじゃ。」 「愛情は込めてないから。」 「全力で否定しないで下さいよ!幸せな気分ぶち壊しじゃないスかっ!」 「卵焼きで幸せって、安い男だわね。」 「うわ、酷っ!」 他愛もないやり取り。 だけど、最近めまぐるしく変化した生活の中で、こういう差し障りのない穏やかな時間が心地良く感じられた。 柴田君は主婦的な感覚が備わっているのなら、さぞ料理上手な事だろう…と想像したり。 何年振りかで作った塩コショウ味の卵焼きをお箸で半分に割り、パクリと口に入れる。 …ん、まあまあかな。 ちょっとだけ微妙に感じたのはきっと…母が作ってくれた懐かしい味に似ているからだと思った。 「ご馳走様っした!はぁ~美味かった、腹一杯っス!」 「それだけ食べればね。」 結構な量だったのに、と見事な食べっぷりに感心する。 たまにご飯粒口元に付けてたし、飾り気のないところは流石体育会系。 気取り屋で気障な誰かさんとは全然違う。 頭に浮かんだ邪念だらけの男の顔を、シッシッと追い払った。 「…そんで主任。」 一通り平らげた後、何故か神妙な顔になる柴田君。 「?…何よ?改まって。」 「何でスリッパだったスか?」 「ンぐっ、…」
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