告白と繋縛

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一口飲んだお茶が気管支に入りかけ、息が詰まりそうになった。 「ゲホゲホッ!」 反射的に出る咳のせいで涙目になる。 「だ、大丈夫っスか!?」 「へ、平気…ゴホッ、だから。」 背後に回り込み背をさすろうとする手をやんわりと断り、何度か咳払いを繰り返した後、大きく息を吐いた。 やっと落ち着きはしたものの。 「……そんなに動揺するなんて…やっぱ、部長絡みなんスね…」 柴田君の中ではどうしても部長への不快感が付きまとうらしく、楽しかった雰囲気も何処へやら急に眉を下げしょげている。 「いや、動揺とかそういうんじゃなくて…」 タイミングが悪いのよ。 蒸し返されるとは思わなかった、みっともなく恥ずかしいスリッパ秘話。 盗聴器を仕掛けられていたからなんて、巡り巡れば私自身の保身の為に口が裂けても言える筈がない。 言い淀んでいると、 「…部長ンとこからスリッパで来るなんて…まさかっ…外出れないいように靴隠されたとか!?」 今度は噴き出したくなるような、幼稚な想像にまで及んだ。 「プッ、何よそれ?子供じゃあるまいし…」 「笑い事じゃないっス!子供がやるならまだ可愛げあるスけど、大人がやれば軟禁と同じっスからね!?立派な犯罪っスよ!」 見当違いの思い込みを本気でムキになる姿は、正義感の塊そのもの。 これで本当の理由を暴露すれば、警察に行こうと言われ兼ねないな…と苦笑い。 「ヒールがね、折れたのよ。」 「え?…ヒール?」 「そう、昨日のいざこざの時に折れたみたいでね。」
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