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私達はしがない雇われ者。
会社にとって、有益を生み出さなければ価値の無い存在。
「うーん、そういう意味じゃなくて……これから先もあの人と競ってくには、まだまだ力不足だなって、今回余計に思い知らされたって言うか。」
「競う?…誰と?」
「部長っス。」
前向きというか無謀というか…若気の至りというやつか。
現実をまざまざと見せ付けられても怯む事無く、巨大な敵に立ち向かおうとする強固な姿勢は、ゆとり世代が横行する中にあって…天晴れと讃えたい程に漢気を感じさせられた。
「下剋上?…面白いわね。あの男の鼻っ柱叩き折ってやりなさいよ。」
「…そんな事言っていいんスか?当面は婚約者っしょ。」
「えっ…?」
『当面は』
妙な言い回しにギクリとする。
「コホン、きっかけはどうあれ相手がどこの誰でも、部内のモチベーションが上がるのは喜ばしい事だもの。」
平静を取り繕いお茶を飲む。
すると、
「俺が言ってんのは、仕事だけじゃないんスけどね。…はぐらかしてんスか?それとも、本気で気付いてないんスか?」
いつになく真剣な眼差しが、私を捉えた。
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