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…………はい?
耳を疑い、柴田君を凝視する。
それでも案外軽薄さを感じないのは、内から滲み出る人柄の良さに尽きると思う、けど。
計算高い訳じゃない分、部長とは違う意味での居心地の悪さを感じた。
「やめてくれない?この歳でスッピンが可愛いとか…嫌味にしか聞こえないわ。」
眉を顰める私に、
「えー、嘘じゃないスよ?そりゃあ、化粧してんのも勿論綺麗っスけど…やっぱ素顔のが想像よりかもっと可愛いかったってのに、猛烈感動しまくりっス。ホント予想以上にめちゃくちゃ可愛いっスね、主任。」
更に連呼し追い打ちをかけて来る。
良く恥ずかし気も無く…聞いてるこっちがむず痒い。
どう反応すれば差し障りがないのだろうかと考えて、
「……お世辞はもういいから、洗面所貸して貰えないかしら?」
ここは一先ず、化粧直しへ逃げる事にした。
有無を言わさない内に、サッとバッグを掴み立ち上がる。
すると、
「…そのままでいて下さい。お願いですから俺の前では、素顔の貴女で…」
「あっ、」
大きな身体が前を遮って、片腕で胸の中に抱き寄せられた。
やんわりと、まるで壊れものを扱うかのように…とても優しく。
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