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誰のせいでと聞かれても、私には身に覚えがない。
キツい口調を浴びせられ続けた数年の内にマゾに目覚めたと言うなら、私の周りは男女問わずマゾだらけ…
いや、そんなのがマゾ誕生の秘話ならば、今頃世界中はマゾ人種で溢れ返っている筈。
「どういう意味?私が貴方に何かしたのかしら?…兎も角一度離して頂戴。きちんと話し合いましょう。」
今度は足掻らわず、人道的判断に委ねてみた。
もしこれでも無体を強いるのなら、私は二度と柴田君とのプライベートの時間は持たないし、仕事上でも常に警戒するだろう。
その怒りにも似た気持ちを、読んだのか汲み取ったのか…
拘束していた腕が緩み、完全に解かれた。
「…すみません…俺、」
途切れた台詞を求めるように向き合い、伏せた瞼を見つめる。
「…焦っちゃって…すみません…」
「うん、色々ビックリしたけど…柴田君は『あの男達』とは違う、ちゃんと思いやりのある人だってわかってるから。…先ずは座ってお茶でも飲みましょう。落ち着いたら…いくらでも聞いてあげるわ。」
「ハイ…」
デカい図体で悄気る姿に絆されそうになる。
お互いが弁当を食べた元の位置で数口お茶を含み静かに喉を潤した後、小さなテーブルに両手をついた柴田君が、
「ーーすいませんっした!」
物凄い勢いで頭を下げて、ゴン!と額をぶつけた音がした。
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