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そんなこともあったような、なかったような…
二十代の頃はそれなりに誘われたりもしたけれど、ハッキリ言って興味のない男達の記憶は定かで無い。
当時の私は既に戸塚さんに縛られた生活を送っていたから、全てを断り続けている内に知らず知らず歳を重ね、いつしか誘いを受ける事も無くなっていった訳だし。
「失礼な話しスよね、下手な誘い文句と言うか…実際のところ高嶺の花だったんス、あの頃の主任は。」
「高嶺の、花?」
「そうスよ。社内じゃもっぱらの噂で…もしかして既にかなり上玉の男がいるのか、或いは男自体に興味が無いのかって。」
「上玉って…何か嫌な言い方ね。」
戸塚さんが上玉…まぁ言い得て妙だけど、百歩譲って遠からず近からずって事にしておこう。
あの人はプライベートでは残念な人でも、外の顔はまるで別人なんだもの。
「怒んないで下さいよ、コレは他の先輩方から聞いただけなんスから。んで、後者だとしたら誰が噂の鋼鉄の女…じゃなかった、高嶺の花をオトせるかって相当注目の的だったらしいっス。一部では賭けの対象にもなってたって。」
「…ツッコミ所は満載だけれど…鋼鉄の女って何?」
「あ、やっぱスルーしてくんないんスね。」
「おかしなあだ名、付けないで頂戴。」
そりゃあ愛想の良い方じゃないって、自覚はしてるけど。
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