告白と繋縛

33/46
前へ
/326ページ
次へ
偽りの仮面を被っていたのは、自分だけではないと思い知らされた朝。 正常に動かしているつもりでいた日常が、急激に色褪せる。 やはりこの世は私にとって、生き地獄でしかなかったのね… 信用、なんてしていなかったけど、仕事における部下としては信頼していた分、虚しさがドッと押し寄せて来た。 柴田君も、過去に私の身体を弄んだ男達や、昨夜絡んできたチンピラ紛いの男達と同じに見えて… 少しでも誰かに何かを期待するのは諦めたつもりでいたのに、どこか奥底に潜んでいたらしい哀れで醜い感情。 今度こそ、完全に萎んで消えていったみたいだ。 心も身体も、急激に冷めていく。 「…何もかもお見通しだって言いたいのかしら?」 「どうですかね?正直なところ、何で主任があの人との関係を続けてるのか…とか、どんな思惑があって部長の婚約者を演じてるのかってのは、まだわかってないんですよ。流石に調査会社にまでは依頼してないんで。謎は自力で暴いてくのが醍醐味でしょ?」 無邪気な笑み、とは言うけれど… 愛してるからとか好きな人のことだから何でも知りたいとかって一方的な理由で、相手側の触れては欲しくない傷を更に抉ろうとする行為が正当化される訳はない。 脅して得るモノに、真の価値もない。 あなたが、そんな事にも気付かないお馬鹿さんだったなんてね。 「あら、調査会社でも探偵でも、好きに調べていいわよ?何なら会社にも部長にも暴露してくれたってかまわないわ。」 「…え?」
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9828人が本棚に入れています
本棚に追加