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予想の範疇を超えたのか、柴田君は拍子抜けしたような間抜け面を見せたものの、それを開き直り位に思ったのだろう。
「またまた…虚勢なんか張っちゃって。そういう気の強いとこ、好きですけどね。でもバレたら、元も子もないんじゃないですか?」
あくまでも優位な物言いに反吐が出そうだ。
「そうね、その時は潔く辞めることにするわ。」
「会社を?」
「ええ。」
「…自分一人が犠牲になれば済むとでも?」
「縦社会ではね、弱い者が切り捨てられれば丸く収まるものよ。あの人達はどうとでもやり直せるでしょうし。それに、犠牲だなんて思わないわ。これは私の身から出た錆だから。」
「随分と簡単に諦めるんですね。…主任にとって会社も部長達も、どうでもいい存在なんですか?」
「貴方が、それを聞くの?私の世界を壊そうとしている張本人が。」
「……」
打って変わり押し黙る柴田君を真っ直ぐに捉えながら、バッグを掴んで立ち上がる。
「ねえ、柴田君。誰にでも知られたくない秘密はあるものよ。だけど貴方は簡単にその領域を侵した…ストーカー紛いの行為によってね。正直なところ貴方は優秀な部下の内だと評価していたのだけれど、それは私の見る目がなかったんだって心の底から反省しているわ。ホント、残念ね。」
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