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残念ついでにもうひとつ。
「あ、最後に忠告しといてあげる。人の事より我が身の心配でもしたらどう?私を脅しておいてタダで済むと思ったら大間違いよ。」
平穏を装い弱味につけ込んで甘い汁を吸う、こういった危険な輩は世間に掃いて捨てる程いるものだ。
「女性の敵であるあなたこそ、社会的制裁を受けるべきだわ。これがどういう意味なのかは、そのイカれた軽いオツムでもわかるわよね?」
例え己れの恥を晒しても息の根を止めてやらないと、第二第三の犠牲者が現れてしまうだろう。
生きているのも苦しく朝を迎えるのが辛くて堪らなかった、過去の自分のような経験なんか誰にもして欲しくない。
現に私はまだ、囚われたまま抜け出せないでいる。
それに人は時として追い詰められた瀬戸際…死神の手招きに誘われてしまう事もあるのだから。
冷ややかな視線の先に、一瞬大きく目を見開いた柴田君がいた。
「…それって、逆に脅してます?」
「気の強い女が好きだって言ったのはあなたでしょう?」
「警察のお偉方に顔の効く婚約者に、助けて貰うつもりですか?」
「…見縊らないで。」
確かに部長なら、権力と財力で猛威を振るい本人のみの粛清に留まらず、一家を路頭に迷わすのもお手の物だと思うけれど…そこまでは望んでいないしね。
「どうするのが正解なのか、その単純な頭でゆっくり考えてごらんなさいな。折角、その婚約者のご厚意で労災も使わせて貰えるんだから。…あなたも親御さんを悲しませたくはない筈よ。」
これで自分の愚かさに気付いてくれたならいいのだけれど。
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