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家族を引き合いに出されたせいか、柴田君は無言で目を逸らす。
多少なりとも罪悪感が芽生えてくれたなら、更生の余地もあるだろう。
そして…その影響で、私に向けられた変態的思考も治ってくれるととても助かるのだけれど。
「じゃあね…サヨナラ。」
私達の繋がりにも終わりを告げ、早々に退散すべく…違和感有りまくりのスリッパを履く。
……締まらないわね…カッコ悪…
後ろ手にドアを閉め、追い掛けて来なかった事に安堵の息を漏らし、古風なアパートを後にした。
沢山の後悔と不甲斐なさが押し寄せ不安が胸を渦巻くけれど、この苦味の混じる塩っぱさはいくつになっても慣れるものじゃない。
はぁ…疲れた……ん?
前方からの人影は、犬の散歩中らしいスポーツウェアのおば様。
「………」
「こ、こんにちは…」
「…こんにちは…」
視線が痛くて居た堪れない。
そりゃあね、ご近所でもない女がスーツにスリッパなんてチグハグな恰好してたら、誰だって怪しむに決まってるわよ。
物凄く不審な目でジロジロと見られて居心地悪く、取り敢えずこの場から早く離れるのが先決と思い、タクシーも通らないような不便な地でアテも無くバス停を探し歩いた。
その後…
帰宅途中に何度もかけられていた電話に気付き、家に着いてから折り返しの連絡を入れた。
相手は勿論、部長。
心配していたみたいだし、一応無事を知らせておかないと後々しつこくされても鬱陶しいもの。
一悶着も二悶着もあったのは伏せておいて、何事もなかったと報告をして…
昼御飯を一緒に、という誘いは疲れたから休みたいのでと丁重にお断りした。
色々勘繰ってはいたけど、近い内に手料理を振舞う約束でなんとか諦めてくれたみたいで助かった。
どうして、私に絡む男共は自分善がりの面倒臭い人達ばかりなのか…日を跨ぎ、今日という日もほとほと嫌気が増しただけ。
眉間に皺を寄せ目を閉じれば、一分も経たない内に強烈な睡魔に襲われ着替える間も無く眠りに落ちた。
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