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そして二時間後…
「…ん……何…?」
煩い振動音に起こされ、表記された名前を見てまたうんざりする。
無視しようかとも思ったけれど、どうせ何度もかけ直して安眠妨害するのだろうしと、少し苛立ちながら電話に出た。
「…はい。」
「あれ?その声…もしかして、寝てた?」
「…ええそうよ、疲れてるって言ったわよね?」
「我が愛しの眠り姫、腕枕のご要望は?」
「結構です。」
余計疲れるに決まってるじゃない。
「添い寝しに行こうか?」
「…しつこい男は嫌いだって言わなかったかしら?切るわよ。」
こんなくだらないやり取りの為に、貴重な睡眠の邪魔をされたのかと思えば益々腹立たしい。
つっけんどんに返した言葉と裏腹に、耳元では小さな笑いが漏れた。
「ごめんごめん、怒らないで。さっき素っ気無くされちゃったから、ちょっと苛めたくなっただけ。用件はちゃんとあるから、ヘソ曲げないで聞いてくれる?」
部長が言うには明日の午前十時に、昨晩の事件について事情聴取をさせて欲しいと警察から連絡が来たらしい。
次から次へと…休まる暇も無い。
「警察署に行けばいいのね?」
「いや、私服警官が家に来るから君が出向く必要は無いよ。」
「家に?…私の?」
「違う、俺の家。」
「どうしてあなたの家に?」
「警察と言えど男だからね。また何かあるといけないから。」
「…あなた、顔が効くんじゃなかったの?」
日本屈指の高木財閥様に喧嘩を売る公務員なんて、そうそういないと思うけど。
「そこは察してくんない?素敵な女性を婚約者に持つ苦悩ってヤツだよね~」
「………」
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