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…危ない危ない、そんなに露骨だったかしら。
一旦息を吐き出して、飴と鞭、どちらが状況に適切なのか瞬時に弾き出し、
「…私を本気で堕としたいのなら、それくらいやってみせて。」
先端に甘い餌を巻き付けた鞭を打つ事にした。
いつもいつも振り回されているのだから、たまにはこちらから攻撃するのも有りよねぇ?
多少、貴重な睡眠の邪魔をされた腹いせも含みつつ、だけど。
「はあぁーーっ…」
盛大な溜息の後、
「君は本当に悪どい女(ヒト)だね。俺を追い詰めて、実は楽しんでる?」
甘い餌の誘惑に食らいついた憐れな男は、お手上げだと降参し投げやりに受諾する。
「その悪どい女が好きなのよね?」
「ハイハイ、好きです愛してますよ。」
「悪趣味だって言ってるの。」
「俺の好みにケチつけないでくれない?」
「変人に好かれるなんて、世も末ね。」
「変態って言ってよ。そっちの方がもっと興奮するから。」
「…気持ち悪…」
一瞬で鳥肌が立った。
「そ?お褒めの言葉、ありがとう。」
天才とお馬鹿は紙一重だと言うけどこの男の場合、変態も付け加えなければならないらしい。
救いようがないポジティブ思考も、ここまで来ると最強無敵だ。
「褒めてないから。」
「じゃあ惚れて貰えるように、頑張るとしますか。」
さり気ないすり替えも、元を正せば私が撒いた種。
その種が多方面へ蔓を伸ばし、私の事など見向きもしなくなればいいのに。
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