告白と繋縛

42/46
9827人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
全てにおいて素っ気無く返すと、 「ふふっ、そのつれなさが堪らなくそそるんだよねぇ。」 何故だか嬉しそうに微笑む部長。 …だから、どうしてそこで喜ぶの? 今に始まった事じゃないけれど、どれだけ嫌味を言おうが冷たくあしらおうが物ともせず、逆にこちらを不快にする話術は別の意味で称賛に値する。 「あら、ごめんなさい。愛想良く出来なくて。」 「それが良いんだよ。上っ面だけの付き合いなんて、商談相手と会社の連中だけで充分でしょ?」 二人の関係性が確立されたものであるなら、御尤もな御意見だけど… 馬鹿な人。 私だって貴方との付き合いは、偽りと打算だらけの脆すぎるハリボテと同じよ。 そして貴方も…ここにいる私が『本物』だと思っているなら、勘違いも甚だしいわ。 誰にも明かした事のない、本当の私はきっと誰より… 「…見る目がないわね……」 「え?」 「何でもないわ。」 昨日の出来事を振り返り、自分も人の事を言ってる場合かと苦笑い。 人は本性を知られたくないから、幾つもの仮面を被り騙し合う。 この世は、自己保身に優れた醜いモンスターの巣窟だ。 弱者は強者に踏み躙られるだけ。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!