9827人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
部長は口角を上げ、
「じゃあ、次は遠慮無くムシャぶり尽くすから、覚悟しといて。」
あざとく妖艶に嗤う。
まるで年がら年中盛りのついた、
「…犬みたい。」
そう貶しながら、穢れた身体は心と裏腹に反応を示す。
ーー奥が、疼く。
決して慣らされた訳じゃ無い。
絶頂を知る女であれば自然な反応…のハズだ。
「クスッ…犬、ねぇ。俺の今は、女王様に仕える蜂か蟻の気分だけど。まぁ…あながち間違いではないかな。嗅覚には自信あるし。」
「…嗅覚?」
「君限定のね。」
「それはつまり…何でもお見通しだって言いたいの?」
「さあ、どうでしょう?」
意味深な笑みが、酷く自信有り気に見えて嫌な感じがする。
…この男はどこまで…私の何を知っているのだろう?
「あなたは一体…あ…」
問い掛けようとして、角を曲がり突然現れた光りに目を細めた。
「ヤバ、対向車来ちゃった。危ないから早く降りて。」
「え?、えぇ…」
反射的に言われるがまま素早く降りドアを閉めると、窓越しに軽く手を振って部長の車は急ぎ発進した。
そこまでの焦らなくても、アパートの前は対向車がすれ違う道幅は充分にあるのに。
もしかしなくても、タイミング良くかわされた?
煮え切らない思いと、もう一つ抱えた不安要素に大きな溜息を零し、疲れた脚を引き摺るようにして我が家へと帰った。
最初のコメントを投稿しよう!