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大体の予想はついてはいるけれど。
「「そんなの、部長に決まってるじゃないですか。」」
「……」
見事なまでのシンクロに、ガックリと肩が落ちた。
二人が口裏合わせて嘘をつくメリットもないし、あの男の性格を考えればそれくらい平然とやってくれそうだ。
私達の事情と彼の本性を全く知らないこの子達では、彼の巧みな口車に乗せられコロリと騙されてしまっても仕方ない。
「…はぁ…だからここに来るまでの間、色々気を遣ってくれていた訳ね…」
いつもと違う不自然な動作をしていた二人が今更ながら滑稽に見える。
そして、申し訳なく思った。
「…ゴメンなさい、その話し…デマだから。」
「えっ?」
「それって…主任は妊娠してないってことですか?」
「してないわよ。」
「でも、部長は」
「してないものはしてないのよ。」
強く断言すると二人は最初ホッとした顔を見せてから、直ぐに複雑そうに眉を寄せた。
「だったら、何で部長は嘘なんか…」
「…正直言って私達その話しを聞かされた時、素直に喜べなかったんですよね…こんな忙しい時期に主任まで居なくなってしまったら、残された私達じゃあもう、どうにも出来ないなって思って…」
「もし本当にそれが嘘だったとしたら、タチが悪いですよ。」
「同じチームの人間としては、信用問題に関わります。」
「あー…うん、そうね。そうだわよね…」
コレは…マズいわ。
何とか誤解は解けたものの、今度は別の問題が発生してしまう。
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