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本人は私を困らせたいとかからかいたいとか、ほんの軽い気持ちだったり、周りの状況を見て楽しんでるつもりかも知れないけれども、これはどう考えても笑ってやり過ごせそうな雰囲気じゃない。
些細な擦れ違いで、ビジネスパートナーと決裂してしまう例もあるし、上司という立場的に信用を失えば営業部全体に影響を及ぼすのも必至。
…うーん…でも…あの悪ガキを庇うのは癪に触るし…
かと言って、まともにやり合うのも面倒なのよねぇ…
少し考えて、
「腹が立つのは私にもわかるわ。けれど別にあの人を許す必要はないと思うの。」
急にピンと閃く。
「…それはどういう…」
「直接、文句言えって事ですか?」
私の意図が理解出来ていないであろう二人は、偶然にも同じ方向へ首を捻った。
その動作が可笑しくて小さく笑いを零しながら、テーブルへ片肘を付き顎を軽く乗せる。
「いいえ、違うわ。どうせなら…騙されてあげればいいのよ。」
「騙される?」
「あの嘘に…わざと?」
「ええ。もしかしたらアレはストレスとか…そう妄想する事で、自分を励ましてるのかも知れないわ。」
「…でもそれって、現実逃避ですよね?部長のクセに情けなくないですか?」
流石菊川さん。
惚れた男以外には相当な辛口だわね…
一方宇土君の場合は、
「あー…いや、けど…わかる気もするなぁ…何かこう、励みや楽しみが見えないとやってけない感じみたいな…」
自分自身にも思い当たる節があるらしく、少し眉をひそめた。
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