嘘と誠

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電話をしなければいけない手を休め、ミルクティーのプルタブを開けた。 コーヒーでは無く、わざとのコレチョイスなのだろうと、一口糖分を摂取する。 「…私らには無いんですかね~。可愛い直属の部下ですよ?」 「…っ…!」 そこへ突然、菊川さんが顔を横に寄せて来たものだから、驚いてむせそうになった。 「そりゃあしょうがないでしょ。愛しの奥方様の身体は気遣わなきゃだし?ねぇ、主任。」 喉の不快感を数度の咳払いで凌ぎ、二人を睨む。 …誰が奥方様か。 意思疎通を図っていなければ、ただの嫌味でしかない。 宇土君の意味深な台詞は、先日の件に準えているのは明白だった。 「そんなに羨ましいなら、飲みかけで良ければ差し上げましょうか?」 「結構です。」 「間接キス位で恨まれたくないですからねぇ。」 「間接キスにも敏感とか、思春期拗らせたままかって感じですけど。」 ちょっと笑える掛け合い漫才…彼等にとっての一瞬の息抜きは終わり、苦笑いで各々席に戻る。 「…っと、いけない。電話だったわ。」 手を伸ばし受話器を取ると、 「ゴメン、また出てくるよ。終わったらラインするから。時間が合えばディナーに行こう。」 今度は前にあるデスクの合間の通路を、部長が早足に通り過ぎて行く。
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