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…ちょっと、そんな大声で…
皆んなの視線が一気に集まる中、その原因の男は現れた時と同じように突風の如く姿を消した。
唖然とする間も無く、ヒソヒソと聞こえる声に溜息が溢れる。
あーもう、残される側の迷惑も考えて欲しいわ…
まぁ…どんなに忙しくても二人で会える時間を、少しでも作ろうとしているのはわかるのだけれど。
今の会話がまた要らぬ女の嫉妬を掻き立て、私の仕事を邪魔する輩が増えるということくらい察して欲しいものだ。
それにしても、底が知れないタフさだわね…
疲れ知らずの若さが羨ましいとは思う。
一体彼は、一日に何時間睡眠をとっているのだろうか。
私だって残業をしてからも持ち帰りの仕事がある日はザラで、お風呂に入ることすら億劫な日だってあるというのに。
少し気になりはしたが、
「…さあ、頑張らないと。」
我に帰り少しぼんやりとして時間を無駄にした分、その後の作業は就業を過ぎてもいつも以上にテキパキと熟す。
そして気付けば、もう20時を過ぎていた。
「じゃあ主任、お先に失礼しますけど…」
「夜遅くに女性の一人歩きは危ないですからね、絶対にタクシーで帰って下さいよ?」
「ハイハイ、心配しなくてもそろそろ終わるから大丈夫よ。あなた達こそ、うっかりうたた寝でもして乗り過ごさないようにね。」
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