嘘と誠

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ここのところ結構な残業続きで、このフロアではいつも私達のチームが最後まで残っていることは屡々。 申し訳ないと思いつつも、今は無理をしてでも乗り切るしかない。 「…ふぅ…もうこんな時間か…」 菊川さん達が帰ってから黙々とパソコンと睨み合い、警備員の見廻りで声を掛けられ、気が付けば21時を過ぎていた。 決して、食事へ行こうという彼の誘いを待っていた訳ではない。 だってとっくに彼からは急な接待が入ったからと、ラインで今日の帰社は出来ない旨を伝えられていたからだ。 そう、これはよくある事。 今更気を害する理由も無く、私は私の仕事をただやっていただけ。 残ったフロアの明かりを全部消し、後は警備員に任せて会社を後にする。 電光の中、相変わらず賑わう街を一人で歩けば、行きつけの店にも暫く寄っていないなとぼんやり考えたり… 転勤だの退職だのとあれだけ騒いでいた割りに、あの日から戸塚さんからは一切アクションや妨害も無い事に安堵したり… ただ淡々と業務を行っている自分を振り返って結局のところ私は何がしたくて、何処へどう収まるつもりなのかと自身に問いかけもした。 婚約は解消して、彼とは決別する。 その結末は変わらないというのに、柴田君が復帰していない今の段階ではまだまだ先の話だと、疲弊しきった身体を気力で動かしつつタクシー乗り場を横目に通り過ぎた。
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