上司と部下

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お昼ご飯の約束をして宥めすかし、彼を部署に押し込めドアを閉めた時、ギリギリのタイミングでエレベーターの扉が開いた音がした。 「おはようございま…、アレ?主任、暫く休むんじゃなかったんですか?」 「あ、宇土君おはよう。大丈夫よ、この通り復活したから。部長が大袈裟に言ったみたいで…迷惑かけて本当にごめんなさい。」 中へ入りデスクの上に無造作に置いてある書類を手に取ると、話しが聞こえていたのか… 「早合点したのは俺だし君が謝る必要はないでしょ。皆には後で纏めて謝罪するから、今まで通り通常業務に戻って。」 彼は自分のデスクで携帯を弄りながら、こちらに笑顔を向けて補足した。 その言葉通り朝礼では、簡単な謝罪とこの先の業務継続の指示が出され、特に柴田君はホッとしていた。 おかげで私も結果報告のメールをする必要は無くなった。 部長に好意を寄せる女の子達は、複雑な顔をしてたけど。 それはまぁそうだろう。 職場で仲良くする姿は見たくないけど、このまま私が仕事を休んで順調に寿退社の準備を進めて行く事も嫌…みたいな? それがわかるから、こちらも要らぬ気を使う。 もういっそ堂々とでも姑息でも、本気で彼をオトしてくれたらいいのに。 誰にも言えない内に秘めた願い。 でもそれは、思ったよりも早い段階で訪れた。
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