12人が本棚に入れています
本棚に追加
里中りょう。
男の子みたいな名前の君は、しかし見た目は確かに女の子だった。
君に言わせると、「忌々しい外見」。
いつだって君は、眉間に深い皺を作りながらそう言ったものだ。
けれど僕にはどうしても、そう思うことは難しかった。
腰まである長い髪は、風が吹くとさらさらとなびく。
肌の色は白く、そして驚くほど痩せていた。
最初は何かの病気なのではないかと思ったくらいだ。
余計な肉は何もついていない。
年頃になると出てくるはずの胸の膨らみもほとんどない。
高く形のいい鼻と眉、ぽってりと厚い唇を持っている。
白い肌によく映える、赤い唇。そして、目。
君を思い出すと、いつも一番最初に、この目に見つめられる。
君の切れ長の目。それは、猫に似ている。
自分の生きる道を知っていて、そこを進むと決めているのに、時折臆病になって立ち止まる。目の奥だけに微かな怯えをちらつかせ、それでも表面は澄ました顔でつんと横を向く。
そう。君は、猫に似ている。
中学三年。
このときで君との時間は終わっているから、君を思い出すときにはいつだって、中学服を着たあの時の姿。
それまでの君も、それからの君も、僕は知らない。
「純ちゃん」
そう呼ぶとき、君は少し首を傾けた。
それは笑っているときも、怒っているときも、泣いているときだって、いつも君はそうした。
君は、気付いていただろうか。
最初のコメントを投稿しよう!