はじまり

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里中りょう。 男の子みたいな名前の君は、しかし見た目は確かに女の子だった。 君に言わせると、「忌々しい外見」。 いつだって君は、眉間に深い皺を作りながらそう言ったものだ。 けれど僕にはどうしても、そう思うことは難しかった。   腰まである長い髪は、風が吹くとさらさらとなびく。 肌の色は白く、そして驚くほど痩せていた。 最初は何かの病気なのではないかと思ったくらいだ。 余計な肉は何もついていない。 年頃になると出てくるはずの胸の膨らみもほとんどない。 高く形のいい鼻と眉、ぽってりと厚い唇を持っている。 白い肌によく映える、赤い唇。そして、目。 君を思い出すと、いつも一番最初に、この目に見つめられる。 君の切れ長の目。それは、猫に似ている。 自分の生きる道を知っていて、そこを進むと決めているのに、時折臆病になって立ち止まる。目の奥だけに微かな怯えをちらつかせ、それでも表面は澄ました顔でつんと横を向く。 そう。君は、猫に似ている。 中学三年。 このときで君との時間は終わっているから、君を思い出すときにはいつだって、中学服を着たあの時の姿。 それまでの君も、それからの君も、僕は知らない。 「純ちゃん」 そう呼ぶとき、君は少し首を傾けた。 それは笑っているときも、怒っているときも、泣いているときだって、いつも君はそうした。 君は、気付いていただろうか。
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