Act.12

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工藤さん。懐かしい。 実はなんと、ナナちゃんの彼氏。 ただし、訳あってそれを知ってるのはごく一部の人のみ。 顔を上げ、私に気付いた工藤さん、椅子から立ち上がりこちらに来てくれた。 「お久しぶりだね」 「久し振りです。これ、お願いします」 「はいはーい。今回配達係、櫻井さんの番だったの?」 「そうなんです」 「じゃあ、預かるね」 伝票と事前にデータを送っておいた経理報告書が合ってるか、照らし合わせてからでないと承認印を捺して貰えないので、時間を潰すしかない。 それが分かっているだけに、コソッと耳打ちで「ナナんとこいっといでよ」と言ってくれた。 しかし、ナナちゃんとて仕事中。 邪魔出来ない。 とりあえず自販機コーナーに行き、そこに設置されたソファーに腰掛けた。 ココアを飲みたくなって、ボタンを押そうとした時だった。 「あっ!!見つけたー!」と言う、急過ぎる声に手元が狂った。 『はぅあ!?隣の生姜湯、押しちゃった……』 悲しげに振り返り、呼ばれた方を確認すると、ナナちゃんがいた。
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