act.13 黒き薔薇、生誕

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優子「うそ・・・・でしょ・・・」 負ける。 NSXの状態も悪くない。 いやむしろ、最高すぎるぐらいだ。 なのに、あの前の車は、加速をやめない。 いや、加速なんかじゃない。 まるで、幻影が尾を引いているかのように見える。 消えては前へ現れ、また消えては前へ、 目の前から遠ざかって行く。 速すぎるなんてものじゃない。 今見えているものは、幻影でしかない。 破壊されて行く、闘争心。 植え付けられる、恐怖。 負ける・・・・・ 優子「はっ!!!」 隣には、気がつけば舞がいる。 舞の顔には、心配の2文字が刻まれているような表情があった。 舞「寝汗、すごいけど、大丈夫??」 自分の姿を確認する。 さっきまで握っていたハンドルが、今ではシャープペンシルと消しゴムを握り、ペダル部分を踏んでいたはずが、自分のカバンを踏んでいた。 さらに、目の前には、今日のゼミ終わりに提出するはずのレポートが、よだれでグシャグシャになっていた。 優子「・・・・・・」 終わった。 レポート提出が、できない。 教授「おはよう、優子君。 お目覚めが良いようで。」 笑顔の教授。 裏には、明らかに怒りがあるのが見え見え。 優子「・・・・ごめんなさい」 その後、優子が解放されたのはゼミ終了30分後だった。 優子「散々だよ、全く。」 舞「にしても、今日の優子はひどかったよ。 だって、睡眠中に『まさか!』とか叫んで皆が驚いてたし、教授は顔をしかめるし、授業のムードは最悪だったよ。」 と言いつつも、思い出すだけで吹き出しそうに、口を抑える。 優子「・・・・・ごめん」 ここ数日間の睡眠時間、一日あたり1時間。 ゼミのレポートをやらなければならないが、NSXと走りたい。 その衝動を抑えなきゃ、抑えなきゃとは思っている。 だが、思えば思うほど、走りたい気持ちは抑えられないもの。 しかし、レジュメに手を抜くわけにはいかない。 NSXにGETRIDEして3時間ぐらい走れば、午前2時。 2時からレジュメを作成し始めて、うたた寝しながら続ければ、気がついた時にはもう午前6時。 支度を始めて、朝ごはんを食べ、午前8時には家を出る。 帰ったらバイト。バイトが終われば・・・というローテーションを繰り返し、今に至る。 無理がある。バイトもリーダー務めてる以上は休むわけにはいかないし、かといってNSXと走っていたいし、学校の授業も手を抜くわけには・・・・
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