act.13 黒き薔薇、生誕

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降りてきた瞬間に一瞬刺さる、NSXへの視線。 その顔の中に、一瞬鬼が見えたような気がしたが、彼は何事もなかったかのように、息子の下へと駆け寄る。 ??「おーい、大丈夫かえ?? 今から引っ張ってあげるでの。」 笹川「助かったよ、親父。 あ、この人が今日のお客さん、北条さん。」 どうも、と頭を下げる。 向けられる視線。 さっきの優しいおじいさんの顔が、こっちを見るたび真剣でいかつい顔を向けてくる。 しばらくその顔を向けた後だった。 低いトーンで、無感情に言い放つ。 ??「おい、啓一、こいつと絡むな。 お前、忘れたのか。 こいつが乗っている車が、どんな車だったのかを。」 啓一の笑顔も消え去り、優子に対し向けられたのは鋭い眼差しだった。 笹川「あぁ、忘れちゃいないよ。 いつかは俺が葬り去る。 だが、今はお客さんだ、そんなカリカリすんじゃねぇよ、親父。」 今でも消し去りたい、そんな思いが、ジンジンと伝わってくる。 とにかく、ただ言えるのは怖い。 それだけだ。 この人も、本物の一人。 首都高統一も、まだまだ壁が高い。 そう感じざるを得ないぐらいの気迫を、彼は持っていた。 ??「チッ、まぁ、良い。 クソ気にくわねぇが、NSX引っさげてついて来い。 お茶程度なら、だしてやっから。」 笹川のお父さんの目。 黒き薔薇を極端に憎み、忌み嫌う、そんな目をしていた。 元々そんな車ではあるが、そんなレベルの眼ではない。 この車との間に、何かあったに違いない。 相棒のことは私のことでもあるから、何があったのか知っておかなければならない。 そんな興味から、優子にしても、ついていく理由があったため、ついていくことにした。 雨が降り始める中、レッカー車に乗りこむ2人。 故障車のFDを率いて、そして、後ろにNSXを引き連れていく。 ___________________________________________________ 麻紀「どうしてもいるの!!」 ゴウ「冗談じゃねぇ! これ以上はこいつの全体的バランスからみても無理だ!! やってもみろ、一気にバランバランになっぞ!!」 ガレージ内で響き渡る、ゴウと麻紀の怒号。 麻紀の中に何があったのかはわからないが、急にパワーがもっとほしいと言い出し、ずっと言うことを聞かない。 これ以上パワーを上げてしまえば、エンジンルームの拡張が必要になり重量が増えるうえ、ボディが圧倒的についていけなくなる。
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