二人の非平凡な日常

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* * * * 珊瑚は目を閉じて立っていた。背後には大きな滝。たくさんの木々が立ち並ぶ壮大な自然のなかに珊瑚はいた。 「珊瑚、自分の気をまわりの自然に溶け込ませるように一体化させるのだ。」 珊瑚は大きく深呼吸する。 心を落ち着かせできるだけまわりの音を聞くよう耳を澄ます。 (…あ……。なんかすごい音がよく聴こえる…) 水が叩きつけられる音。木葉のざわめき。どこかで鳴いている名前も知らない鳥のさえずり。 「…よし。そのままでいい。ここにひとつの蕾がある。花を咲かせてみろ」 「…はい」 ここには豊かな水、堆肥が充分にある。この花に足りないのはなんだろうか…。 緑、青、茶…。 ここには暖かな色が足りない…? 「…暖かな春の陽射しのごとし、柑子色。この小さな蕾に汝の力、宿したまえ…」 そっと口ずさむように詠う。 「ほう…」 ばば様の感心したような声が聞こえた。 目を開けると… 「あっ…」 先程まで固く閉じていた蕾が可愛らしい菫色の花を咲かせたところだった。
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