プロローグ

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  「翼……」  小さく呟いた。  流しっぱなしのテレビでは、ニュース番組の特集で、とある大学生の事を取り上げていた。  男は気を取り直し、一心不乱にメモ帳に書き込みを続ている。  耳からだけ、その情報をそれとなく頭に入れていた。実際には、そこまで聞いてもいないのかもしれない。  画面では、その大学生が爽やかな笑顔を振りまく。そうしながら、インタビュアーの質問に答えていた。 『これからの日本は、農業の時代が来ると思うんですよね。ですが、現状では農業従事者の大半が高齢者の方。そう聞いて、僕のロボット研究が役に立たないかと思ったんです』  そして、画面が切り替わる。  画面には、彼の作成した農業補助ロボット。それが山間部の果樹園で、収穫や運搬を手伝っている映像が映し出された。  ロボットといっているのだが、人型でもネコ型でもなく、言うなれば箱型のロボットである。
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