第八章 高桑の意思

109/109
前へ
/569ページ
次へ
   事件は終わるであろうが、何とも言えない喪失感が両肩にのし掛かってきていた。  師を失った悲しみ。  何年も関わらなくとも、二人は師弟であったのだ。  高桑は、弟子の捜査能力を最後まで高く評価し、そして恐れていた。酒出は、師から教え込まれた捜査手法を、今も極意とし受け継いでいる。  その関係性も、今回の事件を複雑にしていた。 「後の事を、頼む」  それが、板垣の聞いた高桑の最後の言葉であった。  酒出は、それを自分への言葉でもあったのだと、そう思う事にした。そうする事で、やりきれない気持ちに踏ん切りを着けたかったのだ。  師との永遠の別れを受けて。      
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2281人が本棚に入れています
本棚に追加