エピローグ

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   七年前から、ようやく時が動き出したようなものだ。 「あの人については、どうなんだ?」 「復讐の為に、殺人した事には非難的でした。ただ事情が事情だけに、表立って悪く言う者はいないようです」 「そうか……」  それはそれで、良かったのかもしれない。  今回の事件において、七年前の事件が背景にあった。その為、マスコミの取り上げ方が高桑親子に同情的だったのだろう。その扱いは、板垣に対しても同じであった。  復讐の為に、殺人を選んだ事は悪だ。  だが、その心情は分からなくもなく。息子や恋人を、殺害され汚名を着せられた事には同情する。  世間は、そう見たのだろう。  酒出は、ゆったりと一息ついた。  事件を思い起こしているのだろうか、それとも高桑への想いに耽っているのか。酒出にとって、今回の事件ほど後味が悪かった事は無いだろう。それを、今でも悔やんでいるのか。
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