第二章 説得

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   柿崎は、そんな二人の気持ちを察してか、柔らかな笑顔で語りかける。 「お二人に、お願いがあるのです」 「私たちに、ですか?」  命令では無く、お願い。  その言葉の違いを、どう解釈するかは人それぞれ。だが、決して悪い意味合いでない事は笑顔からも分かる。  これが、千葉北署の高見沢署長からであったなら。それが笑顔でも、良い気分にならない筈である。  そこは、柿崎の人柄なのであろう。 「お願いと言うのは、他でもありません。ある人物を、説得していただきたいのです」 「私たちが、説得ですか……」  柿崎の持って回ったような言い方に、松本も要領を得ないといった反応で返す。  だが松本と酒口は、それが誰を指すのか理解していた。逆を言うならば、自分たちにそのような依頼をする上で。該当する人物など、ただ一人しかいないと言う事。 「酒出さん。あっ、いや、酒出警部補の事でしょうか」
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