第二章 説得

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   何かの行動に移さなければ、道徳に反する事も無いと。  すれ違う人の、誰もが振り向きそうな程に美人である。しかしながら、普段はひっそりと目立たない存在の松本。  だが、その内面には驚くほど大胆で。情熱的な気持ちを秘めているのだ。  だがそれは、酒出に対してのみである。 「ですが、警視。酒出さんが乗り気でないのは、それ程の事件では無いと考えてるからでは」 「えぇ。彼は、そう思っているのでしょう」 「だったら、何故ですか?」 「今回ばかりは、その部分に関してだけ。酒出警部補は、間違っていると私は考えているからです」  警視と警部補。  酒口が、この状況で従うべき相手は誰か。それは、聞かれるまでも無い。そもそも、酒出からは何も言われていないのだから。  それでも、酒口は悩んだ。  柿崎の命令に従うのは、やぶさかでは無い。だが、あの酒出を説得する自信などまるで無い。
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