第二章 説得

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   だが、どうあっても時間が無い。  三時間で、一億円が用意出来るのか。いや、既に三時間を切っている。  金を用意するにしても、経営陣に報告し。株主たちに連絡し、了承を得なければならない。伊藤には、一億円を用意する権限は無いのだ。 「総支配人……」 「後は、私が処理するから。君は、業務に戻りなさい」 「ですが、爆弾が……」 「これが、あの事件の犯人とは限らない。悪戯かもしれんだろ」  その場をやり過ごす為、事務員の女性にそう言った。だが、あながち的外れでもなかった。  そう、悪戯の可能性も捨て切れないのである。 「そうだ、悪戯かもしれんじゃないか」  事務員が去った後、伊藤は自分に言い聞かせるように呟いた。一応は口止めしたが、事務員の女性が同僚に話さない保証は無い。  話しを聞いた誰かが、警察に通報する可能性も十分にあるだろう。  警察に、通報する。
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