第二章 説得

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   建物の規模云々に関わらず、前回の事件よりも多くの被害者が出たのは事実。  何がミスだったのか。彼は、そればかりを考えていた。  一方で伊藤を先頭に、現場に向かった捜査員たちは四階に到着。バックヤードスペースから、結婚式場のフロアに突入しようとした。 「これは、酷い……」  伊藤は呟き、その場にへたり込んだ。  捜査員たちは、その横を通り抜けフロアに入る者と、上のフロアに向かう者に別れる。  火災報知器の警報音。  天井から降り注ぐスプリンクラー。  壁や床が焼け焦げた匂い。  四階の被害者は花屋の二名だけだったが、五階は人々の悲鳴がこだましているだろう。それを伊藤が目にしなかったのは、彼にとって幸いだったと言えた。  第二の事件は、こうして起きてしまったのだった。      
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