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「土の中の世界……。どんなに辛いか、分からないだろうな。冷たくて、孤独で、苦しくて……。恭次さんにも味わってもらわなきゃ」
そう言いながら、脇に転がっている古くなった杭を康雄は拾って来た。
そしていつの間に持って来たのか、その手にはチェーンだのバットだの、昔よく使っていたリンチ用の道具をぶら下げている。周りにいる男たちも、見るだけで失神してしまいそうな物騒なものを手にしていた。
恭次は身を縮めた。逃げることもできなければ、逆らうことだってできないのだ。恭次にできる行動はそれしかなかった。
「お兄ちゃん、僕と遊んでくれよ」
右脇に立っている男が、軽い調子で言った。
恭次は思い出していた。その言葉は、自分が若いころ、相手を痛ぶる予告として吐いていた言葉だと。
次の瞬間、恭次に過去を思い出させる凶器が一斉に動き出した瞬間でもあった。
否応なく振り下ろされるチェーン。呼吸をする暇すら与えてくれない腹に打ち下ろされるバット。足下には熱く焼けた金属片が、履いている靴を溶かし始めている臭いが立ち込めていた。
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