国境警備

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 見渡す限りの荒野に人丈以上の長さがある杭が何本も等間隔に打ちこまれていた。その杭には、痛々しい有刺鉄線が巻き付けられ、それは隣の杭へと伸びていた。そんな有刺鉄線に沿うようにして、二人の大柄な男が武器を手に歩いていた。この有刺鉄線より向こう側に人が逃げださないようにする為の警備だ。  有刺鉄線の柵は果てしなく長く、地の果てまでも続いているかのようだ。歩けど、歩けど、果てが見えてこない。さすがに、徒歩で警備をしていると疲れてくる。いつ、誰が逃げ出すか分からない。そんな緊張感が張りつめているせいもあるが。 「なあ。俺達は、いつまでここの警備をしていればいいんだ?かれこれ、十年以上は警備しているぞ」  疲れたのか青白い顔をした青が溜息をついた。その様子を見て、先を歩いていた赤は振り返って言う。 「仕方ないだろう。これが、俺達の仕事なのだから。無断にあっちの国に国外逃亡しようとする輩を捕まえて、国に連れ戻すのが仕事だろう」 「でもな。ここ数年は、国外逃亡しようとした奴はいないだろう。いたとしても、それは俺達の管轄ではない。正当な出国だ」 「だったら、お前は、内勤の方がいいとでもいうのか?俺は嫌だね。同僚は住民を痛めつけるのを楽しんでいるようだが、俺は好きじゃない」  赤は国で行われて所業を思い出すと寒気がしてくる。それは、青も同じだった。 「それは、そうだけど・・・」 「俺は、国のルールだから従っているけど、耐えられないね。第一、俺がいうのも変な話だが、正視できる光景じゃないね。例えば、虚偽罪を犯した者は、その場で柱に縛り付けられ舌を抜かれる刑だ。思い出しただけで、吐き気がしてくる」 「けど、死にはしないだろう」
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