序章 トリガーバットエンド

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* * * 世の中には神様に過保護なまでに愛されているとしか思えないような人間が確かにいて、天羽遊菊がまさにそうだった。 とにかく凄い人だった。 全てが才能の賜物とは思わないが、彼女は努力ではどうしようもない部分があまりにも恵まれすぎている。 誰よりも運動が出来て、 誰よりも頭が良くて、 誰よりも優れた容姿をしている。 ここまでは当たり前。 彼女の凄いところを挙げればきりがないが、 絵は描ける、歌は歌える、料理は作れる、機械は弄れる、お酒は嗜める、可愛いは作れる、などなど。 さらには家が人生ゲームでしか聞いたことがないような額を総資産に持つ大金持ちと来たもんだ。 こういうもののオチとして、 人格が破綻していたり、 びびるほどの極悪人だったり、 世間から天才と呼ばれる人にかぎってろくでもないやつだったりするのだが、彼女は違う。 と、少なくとも俺は思っている。 そんなことを言うと決まって、 「お前、そいつのこと好きだろ」 などと言われるが、その通りである。 例年にはない抉るような寒さが日本を襲った二年前の冬に起こったあの事件は、俺が彼女に恋していたせいでぐちゃぐちゃにこんがらがったのだから。 * * *
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