1人が本棚に入れています
本棚に追加
冗談みたいな話だけど、本当のことなんだ。
事の起こりは三月下旬。桜前線がどーのこーの言われた後くらいかな。
この頃、世界の技術力は止まることなく膨らみ続けていた。
それなら、当然天気予報の当たる確率は上がるはずなんだけど、それでも予想できないぐらいに地球はおかしくなっていたらしい。
そんな中で発表された桜の開花予想も、信用されるはずがない。
ネットでは『今年は桜は咲かない!』とかバカみたいなことが囁かれていたね。
まあ、実際はその通りになっちゃったんだから、あながちバカにもできないんだけど。
三月下旬に咲く。
そう言われていた場所なのに、四月中旬になっても桜が咲かない。
それだけだったら、ネットでネタにされて終わったんだろう。けれども、咲かないどころか、桜が枯れ始めたから、さあ大変。みんな大騒ぎを始めたわけだ。
さっきも少し話したけど、桜は日本人のアイデンティティだからね。
『エコとか知らねー』状態だった僕らも、さすがに焦り始めたってわけさ。
日本各地で『みんなで桜を守ろうキャンペーン』みたいなのが開催されたよ。たぶん名前は違ったけど、似たような内容だったはず。
それまで呑気だった僕も、さすがに花見が今後一生できなくなるのは嫌だったからね。
コンビニとかで募金箱を見かける度に、百円玉を入れたものさ。
そんな感じで、手遅れ感が否めないものの、ようやく世間が環境保護に腰を入れ始めた頃、僕は彼女に出会った。
最初のコメントを投稿しよう!