ぷろろーぐ

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『real fantasy』 世界でこのゲームを知らないと言ったら指を差されて笑われるだろう。 「言った通りにアバター作成までやったか?」 「あぁ、すごいなアレ。細かい部分まで設定できて本当に俺そっくりのアバターができたよ」 「はぁ?」 俺の言ったことに呆れた表情をする拓人。 「何だよ」 俺が聞き返すと拓人はハァッとため息を吐いた。 「あのな、せめてゲームの中ぐらいはカッコ良くしようぜー」 「おい、それは現実の俺はカッコ悪いってか?」 「カッコ悪いとは言わないけどカッコ良くもないよね?」 即答で返しやがったよこいつ。しかも真顔……マジか!? 「ゲームの中では物語の主人公で勇者だよ? なんか彰太は勇者ってよりは冴えない魔法剣士ってところかな? 剣も魔法もずば抜けて強いわけじゃないから使い方に悩むキャラって感じ」 「はは……何だよそれ」 実はアバターも魔法剣士タイプだなんて言えない……。後で変更できるかな……。 「まぁこの傷跡だけは設定できなかったけどな」 右手を何かが貫通したかの様にある傷を見ながらそう呟く。 昔ついた傷で今はもう痛みも無く傷跡だけが残っている。 「そんな傷なんか無かった方がいいだろ」 「…………」 拓人は俺の右手の傷跡を見て悲しそうな顔をした。 「さっ、着いたぜ? 起動の仕方はわかるだろ」 拓人が足を止めて言った。 「あっ」 その拓人の背後には見慣れた建物があり、気づけば俺の住むアパートに着いていた。
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